※写真は、丁寧にインクの拭き取りをしている様子
パソコンなどのコンピュータが普及し、ボタンひとつで何でも出来て便利だが、
手を動かしながら考え、ものを作る機会が減ってきた。
そんな時代に、自分の想像力と、五感をフル回転させ、
少々苦労しながらも、世界でただ一つだけの、自分の世界を形にしてゆく。
小さな世界かもしれないが、それはとても新鮮で楽しく、やりがいだ。
版画の中でも、銅版画の線はとても繊細で鋭い。
鉛筆やペンでは表せない、独特の深みと性質を持つ。
(上図:銅版の原版 ・左はメゾチント、右はエッチングとアクワチント)
銅版画の漆黒の黒を見ていると、吸い込まれそうな心持ちになる。
銅版に、プレス機で重たいローラーの圧力を掛けて刷るので、
それでしか得られない、マチエールが生まれる。
自分の表現したい事に合ったインクや紙を、あれこれ選ぶのも楽しい。
直接的表現の油絵や水彩とは異なる、
間接的プロセスを通した表現ならではの、醍醐味がある。