こんな下絵を描いた。
江戸時代の将軍吉宗の時代、ゾウをベトナムから輸入し、
長崎から江戸まで2か月かけて歩かせた。
そのゾウに興味を持ち、銅版画をシリーズで作っている。
吉宗は、自らの気まぐれで、ゾウを呼び寄せたにも関わらず、最初だけ興味を示しただけで、
それ以降は見に行くことも僅かだったという。
ゾウは、頭の良い動物なので、人の顔もよくわかるし、
よく会いに来てくれる人とそうでない人に対する態度も、きっと違うはず・・
芸をするのを待っていた吉宗に向かって、オナラを吹っ掛けるという
場面。
とある小説を読んでいたら、そんな痛快な描写があったので、
その様子を絵に描いて、皮肉ってみたくなった。
以下は技法の話・・
銅版画にはさまざまな技法があり、それをいくつか組み合わせて、
その人ならではのマチエールを考え、作品つくりに役立てる。
これは、銅版にポスターカラーで描いたあと、グランドをひいたもの。
バットに銅板を入れ、熱湯をかける。
すると、ポスターカラーで描いたところだけが、浮き上がって剥がれてくる。
1回では剥がれないので、何回か繰り返す。
途中、水で冷やし、ブラシでこすると、作業が進む。
描いたところだけ、銅版の肌が見えている。
これを腐食してゆく。
リフトグランドという技法は、こんな流れだ。
筆で描くもよし、割りばしペンで描くもよし、フロッタージュしてもよし、
指で直接ペタペタ描いてもよし、ハンコのように何かの模様を押してもよし、
いろいろ工夫できる。
銅版画の面白いところは、直接絵を描くのと違い、
多少は時間がかかるものの、
絵のテーマやイメージに合うように、銅版に凹凸をつくり、
時には偶然の現象も取り入れたり受け入れながらも、作品に仕上げて
ゆくところだと思う。
腐食という行為と、何トンもの圧力をかけてプレス機で刷ることで得られる
独特の質感は他には無い魅力だ。