この2版を使い、重ね刷りをした。
一つは、主体になる線描中心の版で、もう一つはカラーを使った版だ。
これは、ブルー系のインクを版にのせて、寒冷紗という布や人絹で、ふき取っている途中。
これは、色主体の版だけをプレス機で通した段階だ。
このカラーを主体にしたほうの版は、ヘイター技法でインクを載せた。
ヘイター技法とは、予め粘度を変えておいたインクをローラーでを1つの版にのせる方法。
やわらかいインクの上には、硬いインクは乗らない性質を利用したもの。
以前は、色ごとに版を増やしていて、その分作業工程が多くなり面倒だったけれど、
ここ最近は、ヘイター方式の版と、線主体の版の重ね摺りで、いくらか作業工程を省くことができるようになった。
ただ、それなりの難しさもある。
重ね摺りだと、腐蝕の深さや使う色によっては、インクがクリアーに乗らなかったりと、たまに苦労することもしばしば・・・
実にアナログで、デリケートな作業だと思う。
このあと、ブルー系の版を重ねて刷る。
何とか完成!
ここまで至るまで、試し摺りを何度しただろう・・・
この版画、井の頭自然文化園で暮らしたゾウの物語画集 「今、はな子が笑った!」で最後のページに使った挿絵をもとに、時間をかけて色版にしたものだ。
簡単にその日のうちに出来てしまうようなドライポイントだけの作品も同時進行で作っているけれど、
重みが全く違うなあ~
ドライポイントは、線に感情がストレートに出るのが魅力だ。