hamaguchi’s color mezzotints/ nantenshi gallery
roofs・18×18 1956作
今は無き南天子画廊が出版した、浜口陽三のカラーメゾチントカタログを手に入れました。
1976年に出版されたもので、小ぶりなサイズですが本体は布張りで
箱入りのしっかりしたカタログです。
中の印刷はきれいだけど、カビ、シミがあったりと状態は良いとはいえません。
しかしながら美しい画集なのです。
当工房で、メゾチントをされている方にとって、制作の参考になればと思います。
浜口陽三のメゾチントを初めて見たのは、30代半ばを過ぎてからでした。
銀座のどこかの画廊でしたが、作品の印象を今でも覚えています。
穏やかで、静かな印象・・・
カラー中間色の美しいメゾチント。
織物か繊維のようなマチエール。
省略された、もしくは抽象化されたフォルム。
画廊内は、薄暗く、作品だけに光が当たるように設定されていたこと。
衝撃というよりも、じわじわっとあたたかいものに包まれてゆく感覚。
感動したことというものは、20年以上経っていても覚えているものなのですね。
watermelon・9×14 1955年
quarter lemon ・16×16 1976年
メゾチントは、銅版を目立てからすると、とても手間のかかる技法。
浜口陽三は、基本4版使ったそうです。
吉祥寺美術館に、原版が展示されていたのを見たことがあります。
確かに4版あり、1つ1つの版は比較的きめが粗く目立てられており、
意図的にそうしていたそうです。
重ね摺りしたときに下の版の目立てが生きるようにするためらしい。
モチーフも、どこにでもある身近な野菜や果物が多い。
小さくて可愛らしいものがお好きだったのかしら~
派手な人付き合いは苦手だったそうで、
パリのアトリエにこもって
コツコツと、ご自分の世界を紡いでおられたのでしょう。