ルオーの銅版画から

絵画好きな人は、ルオーの色彩豊かな重厚な油絵を美術館などで目にする機会があるかと思います。

でも、ルオーがある一時期、モノクロの銅版画を精力的に制作していたことは、ご存じでしょうか。

それは、ミセレーレという58枚の銅版画からなります。

ミセレーレの意味は、ラテン語で「神よ、我を憐みたまえ」

宮城県立美術館には、なんと全58枚をすべて収蔵しているとのこと。

まずステンドグラス職人としてスタートしたルオー。

場末の貧しい労働者の住む環境で、生まれ育ちました。

後に、モローを師匠としていたことでも知られています。

ルオーは、父親の死をきっかけにして、

人間社会の奥底に巣食う悪、

憐れな状況の中での人々の苦悩、

そして、罪に汚れた世界だからこそ求められる希望を

主なテーマとして扱い、第一次大戦が始まってからは、

戦争への憤りを絵の中で表現してゆきました。

ここでは、出光美術館蔵品「ジョルジュ・ルオー」の画集(発行元、出光美術館)

から、いくつか取り上げてみたいと思います。

(ミセレーレ)44

わが美しの国よ、どこにあるのだ? 1923年

 

(ミセレーレ)7

自分を王だと信じているが 1923年

(ミセレーレ)8

自分の顔をつくらぬ者があろうか? 1923年

(ミセレーレ)37

人は人にとりて狼なり 1926年

(ミセレーレ)47

深き淵より・・・ 1927年

(ミセレーレ)42

母親に忌み嫌われる戦争 1927年

 

まず、技法についてですが・・

油絵とかで描いたものを写真に撮り、

それを銅版に焼き付けたもの(写真製版技法)を土台に、

その上から、リフトグランドという筆技法を多用して描き、

スクレーパという銅版画の刃をもった工具などで削り磨いたとのことです。

 

全体的に、そぎ落とされた荒削りな力強いフォルムと、

独特なマチエールが印象的です。

そして、どれも精神性の深さが伝わってきます。